マジックを始めて時間が経つと、だんだんと自分の演技をより良くしようと思い始めます。トリックではなく、パフォーマンス自体のレベルをアップさせようと「他ジャンル」に目を向け始めるのです。
パントマイム、ダンス、ジャングリングに手を出してみたり、音楽について詳しくなろうとしたり、話術を磨きたくなったり。
イタリアのマジシャン、Xavier Mortimerはその全てをパフォーマンスに取り込み完成されたパフォーマンスを作り出しています。
今回はそんなマルチな彼をご紹介します。
Xavier Mortimer
イタリア在住のパフォーマー。マジックに、サーカス要素,音楽,コメディをブレンドしたパフォーマンスで世界中を回る。フランスで生まれた彼は音楽とダンスを学校で学び、15歳にしてマジックとマイム、コメディをブレンドしたショーを行う。ヨーロッパを中心にコンテストに出場し賞を多数受賞する。
まずは彼の演技をいくつかご覧頂きましょう。
Xavier Mortimer/ Miroir…miroir
鏡の中の映像を使い、表現の幅を広げるとともに、「不思議さ」を強調しています。
Xaier Mortimer/ Complainte pour un Diabolo
ジャグリングの王道、ディアブロに適切な音響効果を合わせることで、ジャグリングが持つ弱点を上手く克服しています。マジック要素は少なめ。
Xavier Mortimer/ La Danse des Ombres
彼のシグネチャーエフェクトと言えるこの演技。完全に世界観を作り込んでいます。
音楽、トリック、マイムを上手く組み合わせ、どこか笑えるパフォーマンス。彼が優れたマジシャンであるのは間違いありませんが、もしかしたら彼自身マジックに対する執着心は無いのかもしれません。マジシャンはマジックの可能性を信じて、マジックをエンターテイメントに、アートにしようと凌ぎを削っていますが、少し俯瞰して、距離を置いてみると、それらの答えは意外と簡単な事なのかもしれません。
もう一つ、演技をご覧頂きましょう。
Xavier Mortimer / Les Scotchs
近年、日本でもマジックの理論書が発売されるようになり、「演技を作り込む」ということを意識する人が増えて来たように感じます。
クロースアップマジックの持つ「即興感」と対局に位置するであろうこの「作り込み」はコンテストや個人のショーなどショーアップされた場では非常に素晴らしいことです。
しかし同時にステージマジックにはない、クロースアップマジックならではの「即興感」が損なわれてしまうのは少し、物悲しいものです。
ですが以前書かせて頂いた通り、マジック界、特にクロースアップ界は巨大なアマチュアニズムによって構成されています。そのアマチュアニズムがなくならない以上、「即興感」は消える事はないでしょう。
大切なのは棲み分け、ということになりそうです。
今回紹介したXavier Mortimer氏、ステージでのパフォーマンスがメインですが、クロースアップもやります。
最後に今日(1/6)に公開された、出来立てほやほやの動画をどうぞ。