マジック界のオリンピックであるFISM2012に彗星のごとく現れ、業界を騒然とさせた「異常なマジシャン」がいます。
その演技の様はまさに「異常」。前例を見ないとはまさにこの事です。
Yann Frisch – Baltass
彼の名前はYann Frisch。
フランス出身で現在はパリに在住。
1990年生まれ。
彼は10歳の頃にジャグリングとマジックに興味を持ち、その後サーカススクールを幾つか転々とし、17歳の頃にこのFISMアクト“Baltass” の着想を得たようです。
彼がどのようにしてマジック界に現れ世界一になったのか、その経緯を簡単にまとめてみました。
彼の異常な演技は2012年FISMが開催される数年前にフランスで話題になっていました。
多くの一流パフォーマーが出演するフランスのTV番組Le Plus Grand Cabaret Du Mondoに出演し、その動画がYoutubeで公開され、一部のマニアの間で小さな話題となりました。
当時の映像がこちら
Le Plus Grand Cabaret Du Monde – Yann Frisch
ヒゲがなく、爽やかな青年で、今のモジャモジャと同一人物とは思えませんね。
そしてこの動画が投稿された当時は見ての通り、聞いての通り、演技に音楽がついていたのです。
もちろん、当時彼の事を知る人は誰もいませんでしたから、まだそのことに違和感を覚える人はいませんでした。
一般的に、喋らないマジックを演じる時はBGMを流すものです。(以前記事でも紹介しました)
冒頭の演技でも分かるように、彼の演技では音楽を使いません。
(このTV番組に出演する際に、局側から曲を付けるように指示されたか、勝手に付けられたか、真偽は定かではありません。)
聞こえるのは道具とテーブルがぶつかる音と観客のざわめき。
この段階で彼の「異常さ」が分かります。
次に演技スタイルですが、間違いなく「正常ではない」キャラクターです。
初めて彼の演技を見た時はその全てが理解出来ませんでした。
精神異常者とでもいいましょうか、落ち着きがない、狂っている、おぼつかない、とてもポジティブなイメージは受けません。
フランスは難解な芸術性の高いものを好む傾向があるように思います。
彼は1990年生まれ、日本なら平成2年生まれ。まだ若いですがきちんとフランスの流れに傾倒しているようです。
マジック自体の凄さはもはや語るまでもありません。
彼よりもインパクトのある現象を起こしたマジシャンは他にいるかもしれませんが、何故、彼がグランプリに輝き、その名誉を我がものにしたのか。
「差別化」「クリエイティブ」「独創性」と我々は簡単に口にしますが、それらは本当に機能しているでしょうか?
小さな枠組みの中での差別化や独創性は一時的な場凌ぎにしかなりません。すぐにその差は埋まり、独創性も平凡なものとなってしまいます。
彼はカードもコインマジックも並以上実力があり、独特なアイデアも持っていることでしょう。(後に動画があります) それだけの能力があれば、それらで勝負したくなるのが普通です。
しかし、コンテストにおいてそのジャンルはレッドオーシャン、競争の激しい戦場です。
彼自身が、コンテストに勝つために戦略的なクリエイティブを行ったのか、偶然が積み重なった結果なのかは本人しか分かりませんが、今後コンテストに出場するマジシャンにとっては無視できない指標のひとつになったのではないでしょうか。
彼はグランプリを獲った後も精力的にマジシャンの活動を続けています。
マジシャン向けのレクチャーコンテンツを販売したり、
一般人向けのパブリックショーも行っています。
Tour de Magie de Yann Frisch au concert d’Ibrahim Maalouf
コンテストの演技とは対照的な演技です。
饒舌に喋り、生バンドをバッグに演技をするなんて洒落ているではないですか。
カードマジックを披露していますが、スペインの流れを汲んでいるようですね。
Instantané #16 | Yann Frisch
その芸術性の高い雰囲気と演技から、アーティストとしても取り上げられています。
こちらではコインマジックをしています。
現在23歳とまだ若いので、今後の彼の活動に注目です。
最後に、最近公開された彼の演技のPVを載せておきます。
World Champion of Magic : Yann Frisch – Cabinet… 投稿者 Cabinet-de-Curiosites